あずさジャーナル
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「現代ビジネス」に掲載された記事および編集部への強い抗議

2019.03.25

2019年3月19日に講談社「現代ビジネス」に配信された小野寺研太氏の記事「多くの女性が、男性の気持ちを『過剰に忖度してしまう』構造的理由」において、記事中でこちらのブログの文章が無断で使用され、文章の一部が恣意的に切り取られるとともに、文章の本来の意図及び主張が伝わらない形で用いられたことは誠に遺憾である。

私はこのことについて編集部及び筆者の小野寺氏に対し抗議をおこない、私についての引用部分を削除して欲しい旨を要請した。なおこれは、小野寺氏の書いた記事そのものを消してほしいということではなく、私に関する部分を削除してほしいということである。

本日「現代ビジネス」編集部から回答があり、引用など当該部分を削除するとのことであった。しかしながら、今回の記事における私と私の文章の利用の仕方そのものについての謝罪などはなく、あくまでも今回の記事は「社会的に劣位に置かれがちな女性が、男性の気持ちに配慮しなければならない状況に追い込まれがちであること、そうした想像力の非対称性に女性が疲弊してしまうこと、結果として、社会的に重要な役職に女性が就きにくいという構造が再生産されている可能性など、問題は非常に複雑」「こうした問題の一端を示すことを目的としており、それにあたって佐藤様の記事を紹介した次第」という姿勢であった。

この回答の「弁明」を見る限り、編集部は、今回の記事に対して私がおこなった反論(「その後について/なぜ男性たちは惑うのか」という文章の冒頭に追記したもの)の指摘を理解している様子はなく、それこそメディア自身が「官僚的な知」に忖度する形となっている。

つまり、小野寺氏のコラムが、事実上すでに解釈労働の不均衡を批判し構造分析を行っている私自身の発言(文章)をまさに解釈労働に貶めてしまっていることに編集者の側が気づいていない。男性であり、研究者である小野寺氏が「官僚的な知」の側にいるという前提のもとで書かれたものであるということは、注意深い編集者であればすぐにわかるはずである。そうではなかったことに私は強い落胆を覚える(また、フェミニストの方もこのパラドクスにはすぐに気付くだろうと思う。事実、今回の小野寺氏のコラムについて違和感を抱いたというご意見も複数届いた)。

そもそも今回の場合における小野寺氏のグレーバーの用い方(解釈)自体も誤りであると見ている。私は実際に小野寺氏がコラム中であげていたグレーバーの著書『官僚制のユートピア』で該当箇所を確認したが、グレーバーの言う「想像力の死角」とはグレーバー以前にフェミニストたちが既に指摘し議論してきた事柄であると言うことを、グレーバー自身が内省を込めて当該文献のなかで記述しているのである。

小野寺氏のコラムでは、勝手に引用された私のブログ(「その後について/なぜ男性たちは惑うのか」)の後半で私がおこなった構造分析の部分が見事に無視されており、”解釈労働をしてしまう女性”、”不均衡な構造にはまってしまった気の毒な(あるいは残念な)女性”という文脈で私のことが捉えられている。杜撰な「論考」により、当事者である女性自身の手による主体的な「解放」の試み(構造分析)を、なきものとして扱っている彼のコラムの罪は重い。これはあくまで「構造分析」をおこなうのは男性であり研究者である自分だと(無意識的に)思い込んでいる態度であり、まさにグレーバーがいうところの「想像力の死角」であろう。

また、「現代ビジネス」編集部は回答のなかで、昨年から私のブログに注目していたとも述べておられたが、そうであるならば、私が不正確な理解や誤解を避けるためにも勝手な引用や一部の切り取りはしてほしくないということを書いてきたこと、そして取材についてもこの件に関しては受けていないということを把握していたはずである。

それにも関わらず、研究者のかたに言及させる形で私の訴えのごく一部を切り取って無理やりコラムの中に捻じ込み、結果として私が行った問題提起や構造分析を無効化するようなメッセージを当該コラムを通じて拡散してしまったことは、極めて遺憾である。

このようなやり方は、「どうにかして記事化したい」というメディアの側のエゴに根ざしており、私自身が批判してきた「女性の商品化」にもつながる。これが商業主義でなくて何であろうか。

昨年11月に任期満了後の引退とその理由について綴った際、多くのメディアの方から取材依頼を頂いたが、上記の理由からすべてお断りをした。どのメディアのかたもこのことについて、残念としながらもご理解頂き、無理やり記事化することや無断引用はなさらなかった(例外として「夕刊フジ」があり、このことは既にこのブログでも抗議を行った)。

女性の味方であるかのような態度をとりながら、当事者の意思及び意図を無視する形でこうした記事(コラム)をリリースすることは、メディアの悪しきパターナリズムであり、ハラスメント被害を訴えた当事者への抑圧である。断固抗議する。

もちろん、志高く、確固たる知性と調査研究姿勢のもとにジャーナリズムや言論活動に携わっておられる編集者の方々もおられることは言うまでもないが、そうした方々の努力をも踏みにじるような一部メディアのあり方には強い疑問を抱いている。今回の件で私は、確かな検討の過程なく安易に個人の苦しみを商品化しリリースしてしまうという意味合いで「ファストメディア」という言葉を思い浮かべたぐらいである。

私はこのことをもって現状、「現代ビジネス」という媒体に対し、信頼をおくことは二度とないと感じている。

一部ではあるにせよ、メディアの側がこのような手法と姿勢を省みない限り、「女性議員が増えること」はまだまだ遠いだろうなと思うばかりである。

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