あずさジャーナル
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『フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話』

2018.10.27

NHK『フェイクニュース  あるいはどこか遠くの戦争の話』を見た。

すごいドラマだった。

前編では新聞という大メディアへの信頼とネットメディアへの侮蔑が見えたかと思えば、後編では新聞の閉塞感と慣例主義、対するネットメディアの突破力が対比される。安易な「どちらが素晴らしいか」という物差しを消し去って、見る者にそれぞれの意義と問題点を考えさせる。

前編を見た人の中には「ネットメディアをバカにしすぎ」と嫌悪感を抱いた人もいたようだが、ドラマの制作陣の思惑に見事に嵌ってしまったなと今頃、苦笑しているかも知れない。私などはどちらかと言えばネットメディアには日頃から批判的な思いを持っているから、今日の後編で「なるほど、やられた」と思った。素晴らしい構成である。

何より「フェイクニュース」を生み拡散するのは果たして「メディア」なのか?という問いが浮かんでくる。発信者もそれを確かめもせず流布するのも、踊らされるのも受け手である私たちなんだよなと我が身を振り返ることになる。

「あるいはどこか遠くの戦争の話」というサブタイトルの意味も嫌というほど思い知らされてしまう。傍観者たち。情報をシャットアウトする人たち。「自分には関係ないことだし」と決め込んで想像力を捨て去って平気になってしまう感覚。この国に蔓延する過剰な自己責任論や同調圧力、攻撃と排除のエネルギー。そして「無関心」という名の思考力と想像力の“積極的”放棄。これがいちばん恐ろしい。

「自分は違う」「自分は考えているほうだ」とみんなが思っている。私自身もだ。でも、本当は手持ちの僅かな、浅い知識をつぎはぎして「わかったふり」をしたり、誰か「すごいと思う人」の言葉やメッセージをあたかも自分の考えや感覚であるように思い込んだりして日々、漂うように生きているだけなのかも知れない。

私は自分自身の浅薄な知識や経験の乏しさ、視野の狭さ見通しの甘さを改めて恥じる気持ちになった。

また、このドラマで北川景子扮する正義感の塊のような記者の姿に、忘れ去ろうとしても忘れられない、10年近く前の職場のことを思い出す。

私がNHKで記者として働いたほんの僅かな期間のこと。あの一瞬の時間の中で、たった100本ほどしか出稿しなかった原稿の後ろにある、かけがけのない出会いと思い。一生忘れられない経験がいくつもいくつも、たった1分50秒のニュース原稿に詰まっている。もう二度と戻ることのない世界、けれども懐かしくてたまらない世界の話。

ほんの僅かな期間でも記者として働いていたこと、その職業を、この社会をより良いものに進歩させるための手段として信じて選び、志したことを私は大切に思っている。

記者、それもNHKのと言えば、「クズ」「ゴミ」「犬HK」などという言葉を投げつけられる。市議選に立候補する際も「NHKの記者だったなんて書かない方がいいよ」と幾人もに言われた。権力の手先、と面と向かって吐き捨てられたことも一度や二度ではない。

そのたびに、悔しくて悲しくて「記者という仕事を馬鹿にしないでほしい」「組織というくくりでしか判断しないのは間違っている、記者個人を十把一絡げに断罪しないでほしい」と反論してしまったのだが、なによりも辛く悔しいのは、NHKが本当に「信じられない」「情けない」ニュースを出す時だ。この4年間、何度もテレビ画面に向かってリモコンを投げつけた。違う、あの頃私が目指していた「報道」はこんなニュースじゃない、違う、NHKにいる仲間たち、先輩たちはこんなニュースを出すために現場で頑張っている訳じゃない、みんなどんな思いで働いているか…とひとりで地団駄を踏んだ。

あの組織から真っ先に逃げ出した自分を恥じて呪って、「クズ」「ゴミ」「権力の手先」という様々な人の言葉が刃のように刺さった。自己嫌悪と罪悪感で苦しかった。

ドラマ『フェイクニュース』は、記者同期だった男性がプロデューサーとして制作陣に名を連ねている。独創的な人で、私などには想像のつかない世界観をもっているような印象がある。彼がこのドラマに込めた思いを自分なりに想像しながら見ていた。

私は半年後に議員の任期が満了したら、SNSは全て閉じるつもりでいる。Facebookとホームページをクローズして「ネット」から距離を置くと決めている。

けれど、このドラマは「本当にそれでいいの?」と問いかけてくるような怖さがあった。私は決めたことはめったに覆せない融通の効かない厄介な性格なのだけれども、珍しく、「それでいいのかな」と考えさせられた。

私は「どこか遠く」に行こうとしていたのかな、と思う。ネットを遮断して「戦争」が起きている場所から離れて、静かな自分を取り戻そうと考えていたのかな、と。

でも、取り戻すってなんだろう。

誰か知らない人たち/会ったこともない人たちが勝手に詰めてくる私的で近すぎる距離感や承認欲求の投影、支配的あるいは依存的な関わり方、嫉妬や悪意の攻撃、そして、フェイクニュース。ネットの海の波は荒くて、溺れそうでいつも苦しい。

そこから出ることが「静かな自分を取り戻すこと」だと思っていたけれど…。

「それでいいの?」と考える。20代の、青くさい理想を信じて疑わない頃の自分自身の顔が、浮かぶ。

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