あずさジャーナル
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八王子市歌が作られた背景を知る

2017.11.23

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みなさんは、八王子市歌が作られた背景をご存知でしょうか。「そもそも八王子市歌を知らない」というかたも多いと思います。

本日、八王子労政会館にて、音楽ジャーナリストの市野宗彦さん(グループ多摩じまん)を講師に迎え、八王子市歌の問題点を考える講演会が行われました。演奏協力は佐伯義人さん。

八王子平和強化月間のイベントのひとつで、「八王子市歌」を考える会、八王子手をつなぐ女性の会、八王子市教職員組合の共催です。

八王子市歌は1936年制定。作詞は北原白秋、作曲は山田耕作です。「奮え多摩のますらを」というフレーズが繰り返され、「仰ぐべし御陵」という歌詞もあります。

もしかすると、「何が問題なのかわからない」というかたもおられるかも知れません。しかしながら、この歌がどんな時代背景のもとで作られ、歌われていたのかということを知ると、2017年の現代にこの歌が推奨されることのおかしさがよくわかります。
市野宗彦さんの研究資料をもとに、考えてみたいと思います。

八王子市歌が制定された1936年は、日中戦争の前年で、2.26事件の起きた年です。国防婦人会か設立された年でもあります。

「ますらを」という言葉は、歌の中では「戦争に出かける兵士」「戦争で戦う兵士」「戦争で死んだ兵士」を指して使われることが多かったことがわかっています。

戦前、戦中に歌われた軍歌、唱歌には、
「命を捨ててますらをが」「ますらをは花と散りぬる」「散りて輝くますらをの」という歌詞が登場しています。

「靖国神社」という尋常小学校唱歌には、「命は軽く 義は重し その義を践(ふ)みて大君に 命ささげし 大丈夫(ますらお)よ」という歌詞があります。

命は軽く、義は重し。大君に命ささげしますらお。

皆さんはどうお感じになりますか。戦争に行くということは、個人がその命を国のため、天皇のために捧げるということでした。私たちの命は、「国を守る」という“大義”よりも軽いものだと歌われていたのです。

そして、国のために命を捧げて死ぬことは、「誉れ」「讃えよ」「感激」と歌われていました。

私たちはどんなことを、喜びと感じるでしょうか。私たちのかけがえのないこの命のことを、どう感じているでしょうか。
生命がこの世界に生まれ、育まれ、花開いて行くことの尊さ。生きとし生けるものを愛し慈しむことを、私は喜びと感じます。

私は、死を賛美し、死にゆくことに喜びを見出す考え方、個人に犠牲としての死を求める社会のあり方を、美しいものだとは思いません。

「昔の歌を歌ったっていいじゃないか」と言う人もいます。しかし、行政がこの歌の作られた歴史的背景に目を向けることなく、「市制100周年の気運を盛り上げるため」であるとか、「大切に守って行くべきもの」として推奨し、市民、子どもたちに歌わせることは、おかしいと思います。

石森市長は、「八王子市歌」を考える会がことし9月に提出した要請書への回答で「歌詞は、制定当時における本市の隆盛を比喩的に表現しているものであると受け止めています」と見解を示しています。

しかし、制定当時の「隆盛」とは、国民が軍国主義に駆り立てられ、戦争に動員されていった「昂まり」なのではないでしょうか。

八王子市歌の第1番です。「八王子 旺(さか)んなり機業 新興の意気に起つべし」。

作曲者の山田耕作は、1943年の「音楽之友」7月号のなかで、こう述べています。
「音楽は戦力増強の糧である。今は音楽を消閑消費の面に用いてはならない。国民をして皇国に生まれた光栄を自覚せしめ、勇気をふるい起こし、協力団結の精神を培ひ、耐久の意志を強め、戦ひのために、戦時産業のために、不撓(とう)不屈の気力を養ふことが、音楽に課せられた重要な任務である」。

(参照:小村公次『日本の軍歌』 学習の友社・2011年)

八王子は織物のまちとして栄えてきましたが、この歌が制定された当時には、織物業から軍需産業に転換しつつありました。

石森市長の言う「制定当時における本市の隆盛」は、作曲者の山田耕作によって、戦力増強のための気運醸成の高まりのなかにあったことが述べられている訳です。

また、1932年の『八王子郷土資料』の巻頭には「限りなき愛郷心を啓培し、進んで燃ゆるが如き祖国愛を陶冶し、個人として市民として国民として、よりよき郷土、よりよき日本の建設に邁進し得る全一な創造的人格を確立せねばならぬ」という文章が掲載されています。ここからも、当時の「気運」がよくわかります。

八王子市は、この市歌の無自覚な継承をやめ、市民に歌わせるということはせず、当時の社会情勢を知るための歴史的資料として捉えるべきではないでしょうか。
市は、戦前の市歌を現在も市の行事や学校で歌わせるおかしさを受け止め、扱いを再考すべきでしょう。

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