あずさジャーナル
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[閑話休題]社民党八王子総支部の昼下がり

2017.07.12

「お嬢さん、いつも元気がいいねえ」。

八王子市八幡町にある勤労者福祉会館。ガラス戸の先、階段を駆け上がって銀朱色のドアを開けると、社民党八王子総支部の会議室である。

それにしても今日は暑い。汗だくになった体をエアコンの風が心地よく包んでくれる。狭い会議室のパイプ椅子には、植松敏夫・八王子総支部代表が微笑みながら腰掛けている。今日は総支部の定例会議。いつも時間間際にバタバタと駆け込む私を、植松さんは穏やかな表情で迎えてくれる。83歳の植松さんは時折、親しみを込めた冗談として私のことを「お嬢さん」と呼んでくれるのだった。

植松さんは社会党の時代に都議2期、市議4期をつとめた八王子社民の重鎮である。しかしそんな重々しい雰囲気を全く感じさせない、気取らない優しい人柄は、私のこころのオアシスである。

郵便物のチェックをしていると、先に封書類を整理してくれた植松さんが一言、「不要なものはちゃんと片付けなさいよ」とコメント。支部には色々なものが届く。処置に困るのは差出人不明の「怪しい」お手紙や、様々な「勧誘」のダイレクトメールなどだ。目を通して不要なものは捨てるのだが、冊子類だと何となく捨てにくい。高価そうな紙を捨てるのが忍びない、という感覚になるのである。

しばらく放置していた不要な冊子を手に取ると、付箋が貼ってあり「廃棄すること」と書いてある。植松さんがとなりで嬉しそうに「さて誰の字でしょう」と言うので、「井上さん(井上睦子・元市議)かなあ」と答えると、「残念。私の字ですよ」と満足そうに笑っている。
コワイ井上さん、もとい、恐れ多い井上さんに叱られると私は途端にしょげ返ってしまうのだが、おちゃめな植松さんには叱られてもついつい頰が緩んでしまう。

社民党八王子総支部の会議には植松さん、井上さんの他にも、大日向宏・元市議や「選挙の神様」と呼ばれる森崎武利さんらが参加する。会議の中身は機密(!)事項なので書かないけれども、このメンバーはとにもかくにも「最強」なのだ。
いつかもし、私が歳をとってゆったりとした時間を与えられたら、このメンバーを登場人物にして八王子社民の物語を書くぞ、と密かに思っている。そのくらい、どの人も個性的でびっくりするようなバックグラウンドをお持ちの、面白いメンバーなのである。

会議を終え、植松さんとしばし雑談をする。クラッシック鑑賞が趣味の植松さんは、次に行くコンサートの話を嬉しそうに話してくれた。植松さんは新聞の広告欄を切り抜き、予約したチケットの番号を記して手帳に挟んでおられる。それを見て何だかほっとする。毎日毎日、私はパソコンとスマートフォンの画面に文字を打ち込んでばかりいるからだ。手書きのノートも作っているが、やはり仕事も私生活もデジタル化してしまっている。「紙」の手触り。誰かの温度を感じる手書きの文字を見ると、こころが和む。

植松さんはとてもマメで、きちんとした人だ。現役引退して25年ほど経つ今も、大切な予定を手帳に書き込み、スケジュール管理をしている。今日も早速、「次の行動は16日の2時と、来月は19日の朝10時半だな」と言いながら、「NO WAR八王子アクション」の予定を確認していた。

植松さんはすごいですねと伝えるたびに、「私はもうロートルですから」と口をすぼめて笑う植松さん。以前、植松さんの自宅で現役時代の写真を見たが、鋭い眼差しで演説をしている姿はとても格好良かった。政治家である以前に、植松さんは活動家であり、闘士だったのだ。

植松さんがかつて都議選でトップ当選して叩き出した6万5938票は、いまも残る記録である。2位の候補者に2万3000票あまりの差をつけていた。1989年、私が5歳の頃のことだ。

若いということは、「いまが全て」という青々とした自信や万能感に震える時期を過ごしているということである。いま32歳の私は、政治や運動の世界では「とにかく若い」。けれどその若さにあぐらをかいていたら、あっという間に私は「滅びて」しまうだろう。時代は傲慢な若人のエネルギーを飲み込んで、フルスピードで変化を遂げて行く。「何か出来るはず」だった私たちは、「何もできなかった」と自分に舌打ちしながら老いてしまうかも知れない。

植松さんは私の「身元引き受け人」のような存在である。一時代を築いた植松さんだからこそ、私のような生意気な若者を懐深く受け止め、穏やかに見守ってくれるのだ。それは井上睦子・元市議も同様である。7期28年を務めた女性市議。とても厳しい人だが、その厳しさに感謝する日が必ず来るだろうと思っている。

私たちは、「乗り越える」ことを目指さなければならない。良いところも、そして悪いところも、すべて。
リベラルはいま、新しくなって変わらなければいけない。けれど、新しくなるということは、過去を捨て去ることではない。先輩たちの経験は、私たち若い世代にとって、手を伸ばして聞かせてもらうべき武器なのではといつも思う。

先輩たちが闘ってきた時代は、激烈な時代だった。新しい時代を作ってやるんだというエネルギー、世の中を動かすんだと集まる仲間たちの熱気。政治や選挙を闘うことが、生活の潤いとして当たり前に語られた日々。いまは穏やかな植松さんの瞳が見つめてきたそれらの出来事。私は時代の連続性のなかで、捨て去ってはいけない過去のことを思う。

一方、植松さんは「思い出話」をあまりしない。「昔はこうだったんだ」と押し付けのように語ることをしない人である。
こちらが聞かせて下さいと頼むと、「もうおじいさんですから」と微笑みながら懐かしそうに少し話してくれるが、それよりもこちらの話をたくさん聞いてくれる。
「若い人は、いいねえ」と言いながら、明るい言葉で励まし、そっと見ていてくれる。街宣などの現場にも来てくれる。とても嬉しい。

乗り越えなければ、と思う。私は植松さんにいつまでも頼っていてはいけないし、いつまでも「若い人」として甘えた考えでいてはいけない。傲慢な自尊心の炎には、ちゃんと自分で水をかけて鎮火させて、謙虚に日々の仕事を丁寧にこなしていきたい。そうしたなかで、新しいものをつくるエネルギーを蓄えていきたい。

何かが新しくなるということは、一瞬の風で変わるものばかりではないと思う。
難しいものに向き合って、乗り越える作業をして、たくさんの人と長い時間をかけて手をつないでいって、みんなで一緒に扉を開けるような、静かなものなのではないかと思う。

植松さんに見せたい景色が私にはあって、「95歳になるまで、あと11年は生きているようにしますから」と笑う植松さんに、「間に合いましたよ」と言えたら、と思っている。

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