あずさジャーナル
journal

内心の自由、表現の自由、通信の秘密

2017.05.15

19歳の時と20歳の時、大江健三郎さんに手紙を書いたことがあった。1度目は文庫の出ていた新潮社宛、2度目はコラム連載のあった朝日新聞社宛に「大江健三郎さんへの感想です」と記して送った。あの頃、小説は救いとして日常のなかに存在していた。「救われた」ことを伝えるために手紙を書いた。

いま、仕事以外の場面で誰かに手紙を書き送ること自体が少なくなった。私たちから時間的な余裕が奪われるにつれ、メールがその代替手段となって久しいが、「手紙」を書くことの喜びや楽しさに思いを馳せる。内心の自由、表現の自由、文通の自由が保障されたこの国で、私たちはこころの豊かさを得る。

内心の自由、表現の自由、通信の秘密。憲法で保障されたこれらが脅かされる「共謀罪」。国会は今週がヤマ場。「共謀罪」は監視社会をもたらし、私たちを萎縮させる。個人のこころから伸びやかさを奪い、他者とつながり合う自由を侵害する。まともな答弁もなされないなか、採決などあってはならない。

大江さんに手紙を書き送った頃は、自宅にテレビは置かず、インターネットも使っていなかった。携帯もあまり好きではなかった。大学の図書館で新聞を読むのが「情報源」で、大学2年生になってようやく自宅でインターネットを使うようになった。あのまま使わずにいたら、どんな人間になっていただろう。

スマートフォンが当たり前のように生活の一部となった今では考えられないような、20歳当時の生活。けれど特段の不便さも感じず、自由な時間に私は「手紙」を書くのを楽しみにしていた。親しい友人や、実家宛にもよく手紙を書いた。本を読み、ペンを握りしめて、こころを紙の上に綴る楽しさ。

今日は自室の机の片付けをし、当時の「手紙」の書きかけのようなものを発見して懐かしい思いになった。大江さんに送った手紙の内容はうろ覚えだが、作品への感想と、自分は核に抵抗する個人として生きていきたいです、というような「決意表明」だったような記憶がある。その年の夏、私は広島へ行った。

その年は2005年。戦後60年だった。
私はひとりで広島へ行き、60年目の8月6日を経験した。その年は大江さんの小説、エーリッヒ・フロムの著作をかばんに詰めてドイツにも行った。私の「思想」のようなものは、誰かから持たされたものではなく、私自身が選び取り、大切に育ててきたものだ。

自分の選んび育ててきたものを国家によって管理されるようなことがあっては、たまらない。

20歳の「私」に、32歳になった自分がどう応えるのかと考えてしまう。
過去の自分に「あなたは私の理想をかなえてくれているのか」と問われたら、いまの私は胸を張れるのか。
日々の仕事のなかで「実現」しているのだよと答えられるか。それで良いのか。
「共謀罪」のニュースを読み、自問する。

あずさジャーナル一覧へ
PDFダウンロード
社民党
社会民主党八王子総支部事務所
〒192-0053 八王子市八幡町14-13
TEL/FAX : 042-626-7545
佐藤あずさのFacebook 佐藤あずさのtwitter

Page Top